太陽の涙って、アメリカが泣いているってこと?
『ティアー・オブ・ザ・サン』Tears of the Sun (2003) by Antoine Fuqua: Bruce Willis, Monica Bellucci, Tom Skerritt)
☆☆☆
お食後にお向かいのビデオ屋に行って、ブルース・ウィリスの『ティアー・オブ・ザ・サン』を借りてくる。
なんだか痛々しいほどアメリカの「被害者意識」が露出した映画だった。
ナイジェリアの内戦のときに、ジャングルの教会に取り残されたアメリカ人の医師を救出にゆく特殊部隊の話。
一昔前なら、悪ものに襲われて困っている良民を救いに騎兵隊が駆けつけると歓呼の声で迎えられるという話になるのだろうが、今はさすがにそんな映画は作れない。
特殊部隊はゲリラと同じように、戦争を飯の種にしている「暴力的なやつら」という冷たい視線で迎えられ、救出されるはずのアメリカ女性も「何しにきやがった」という態度でつんけんしている。
もちろん、最後は「あなたのおかげよ」ということでブルース大尉は女医さんにきっちりハグしてもらえるのだけれど、別に恋に落ちるとか、敬意を抱くとか、そういうことではなく、悪路を操縦してくれたドライバーに「どうも、ね」と握手する程度の愛情表現である。
その「どうもね」を獲得するために、ブルース大尉は部下のほとんどを死なせ、本人も重傷を負うことになる。
どう考えても、損得勘定の合わない戦争だ。
おそらくいまのアメリカの平均的市民の「戦争観」はこれにかなり温度が近いのだろうと思う。
これだけ犠牲を払っても、リターンはわずか。
感謝のことばも外交辞令程度のものにすぎない。
そんな分の悪い取り引きのために、何人ものアメリカの若者が死んでゆく。
もう止めないか?
世界なんかほっとこうよう。
「悪の枢軸」がジェノサイドをやろうと独裁をやろうと政治犯を虐殺しようと、もうほっとこうよ・・・好きにさせてやろうよ。
そんなアメリカ市民の「本音」が漏れ聞こえてくる。
なんとなく「モンロー主義」への後退を予見させる映画だった。
イラクのあと、アメリカは必ずモンロー主義的な孤立政策のうちにふたたび閉じこもるであろう。
ハリウッド映画の「徴候性」を侮ってはいけない(予言がはずれたら、ごめんね)。