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スーパーマン・リターンズ 

(監督:ブライアン・シンガー、出演:ブランドン・ラウス、ケイト・ボスワース、ケビン・スペイシー)

 世論調査によると、アメリカ人の95パーセントは「神あるいは偉大なるもの」の存在を信じているそうです。意外かもしれませんが、世界でもっとも宗教的な国なんです、アメリカは。
CCMってご存じですか?ご存じない?CCMは「コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック」のこと。オークランドのマチヤマさんから聴いた話では、CCMにはクリスチャン・アイドル、クリスチャン・ヘビメタ、クリスチャン・ハードコア・パンク、クリスチャン・テクノ、クリスチャン・ギャングスタ・ラップなど、あらゆる音楽ジャンルがあって、クリスチャン・パンクなんかだと、ミュージシャンは頭はモヒカン、全身タトゥーにピアスで、ギターをぎんぎん鳴らしてライブをやるけど、歌詞はすべて「イエスを称える」内容なんだそうです。共和党とFOXテレビの強力なプッシュを得て、中西部では大人気な音楽ジャンルだそうです。
そんなディープにリリジャスなアメリカからこの夏ニッポンに届いたコンテンポラリー・クリスチャン・ムーヴィー。それが『スーパーマン・リターンズ』です。
お話は78年のクリトファー・リーヴの『スーパーマン』の続き。地球を離れて五年。久しぶりにメトロポリスの『デイリー・プラネット』社に戻ってきたクラーク・ケント(ブランドン・ラウスは先代クリトファー・リーヴの顎を少しほっそりさせた涼しい風貌。とってもキュートです)は、かつての恋人ロイス・レインに夫と子どもがいる(ただし未入籍)と知ってびっくり。でも、気を取り直して、成層圏から耳を澄ませて、地球上の困った人たちを救う仕事に日々精を出します。しかし、悪の天才レックス・ルーサー(ケヴィン・スペイシー怪演)の謀略で重傷を負ってしまいます。その瀕死の病床に近づいて、耳元にロイスがあることばをささやきます(観客には聞こえません)。でも、そのあとにスーパーマンがロイスの息子のジェイソンくんの寝顔に向かって、「おまえが私の使命を継ぐのだよ」と告げるところで、ロイスがささやいた言葉が何だったか知れるのです。そう、ジェイソンくんはスーパーマンの息子だったんです(ネタをばらしてごめんなさい!)
しかし、これはよく考えると不条理な話です。だって、78年版『スーパーマン』をご覧の方はご存じでしょうけれど、スーパーマンとロイスは「そういう」関係じゃなかったんですから(スーパーマンが射精すると、その勢いで相手の女性は内臓破裂で即死してしまうという説もありますし)。ということは・・・
ロイスには俗世の「夫」リチャードがいますし、ジェイソンくんも彼を「父さん」と呼んでいます。でも、ほんとうのお父さんは、いつも成層圏の高みから世界の苦しむ人々の声に耳傾ける「天なるあの方」。つまり、「ヨセフ」がいて、「処女懐胎するマリア」がいて、「天なる父」がいてということになると・・・。「なるほど!そうきたか・・・」と私がうなったのもおわかりになるでしょう。
考えてみたら、クラーク・ケントって出が中西部のスモールヴィルで、子ども時代はネルシャツにジーンズでトウモロコシ畑を走り回っていましたから、きっと飲むのはバーボン、選挙のときには共和党に入れて、CCM聴いてるようなタイプの青年なんでしょうね。救世主はどうやら「そこから」世界に来臨するようです。
という点からして、遠からず映画史的には「2006年アメリカ」のランドマークを画した作品として繰り返し言及されることになるでしょう。ですから、必見。

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2006年12月31日 19:27に投稿されたエントリーのページです。

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